Scene.25 向かい風が吹いてきた、飛べ!
高円寺文庫センター物語㉕
「店長、どこにおったと?!」
「ニューバーグはお休みやから、福龍門で中華ランチばい」
「携帯に電話したのに、また変なとこいじって着信音が鳴らなかったんでしょ!
あのカリスマ編集者の都築響一さんがみえて、ご自分で出版される写真集のご案内に来られたのに・・・・これですよ」
「そっかぁ~ドジったな!
わ、なにこれ! アラーキーテイストだけどさ、こっちもまたイヤラシサが方向かえてビンビン来るなぁ~すっげ、いいじゃん」
「なんばい。スケベおやじになっとらんと、仕入れの算段せんと!」
「ホント、店長しっかりして! はい、これ都築さんの名刺ね」
「この北村さんって、1930年生まれはボクより20歳も上だぜ。これは、いつ頃撮ったんだろっていうか都築さん。この方を見出して、写真集で自費出版しちゃうっていうのも凄いよな!
ヌードばっかりな中で、このさ『東京から来た人妻、神戸異人館にて』は、着衣なのに・・・・あぁ、ヤバい!」
「店長。2800円なんだから、買って家で楽しんで。
都築さんが、『素人なのに、凄いパワーを感じた』って言ってましたよ。お店を見まわして、文庫版の『TOKYO STYLE』が平積みだったり『ROADSIDE JAPAN』が、いまだに置いてあるのに喜ばれていました」
「そっかぁ、確かにこれは『良識ある書店』や『文化の薫る』書店じゃ扱えないよな!」
「でしょ!
だから都築さんは、うちに来てくれたと思うんだけど。どんなツテかわからないけど、ここはコレを仕入れて都築さんイベントに繋げる手ですよ」
「店長、お帰りなさい!」
「雑誌の『Title』の取材って、凄かねぇ・・・・文藝春秋ばい。
あれ、冴えない顔してなにかミスったと?」
「バカ言え、腰痛再発でさ。カフェで座っているのも、辛かっただけ!
『TITLe』は、年末前倒しの12月21日発売号に掲載だって」
「店長、痛いのねぇ・・・・内山さんとの受け答え、なんちゃって九州弁になっとらんばい!
ちゃんと、インタビューに答えられたんでしょうね?!」
「うん。
特集がさ、『2001:毒書計画』なんて尖がったこと言うんだよ。ところがさ、例によってコピーは、『オモシロ書店ガイド 個性派書店に遊びに行こう!』だってよ。
なんでも、中野のタコシェと大予言に阿佐ヶ谷の書楽と、高円寺ではバロックとおなじ括りらしいんだ。
めんどくさくなっちゃって、売れる雑誌は『BURST』っつって『ボクらがわかる範囲の本しか置かない。ガキとジジババ向けの本は扱わない』って、言っといたぜ。
そしたら編集者が、「『五体不満足』は売れますか?」なんて言うから「障害者プロレス」の本の方が売れるんですけど」って、言っといたもんね。
「店長。それみんな事実じゃないですか、ちっとも面白くもないのに」
「だろ、さわっちょ!
ところが、編集さんにはウケちゃったみたいで・・・・『キャッチコピーは、これだな。
本屋と言えば神保町。それはそれで正解だけど、世の中いろいろあるわけで、中央線のサブカル系、渋谷近辺のアート系等々、TITLeはむしろこっちを薦めるね』
だってよ!」
「その方、高円寺的にはアンテナまとも。発売日が楽しみです」
「ま、文春の大所帯に少しはイケてる奴もいるだろうけどさ。
創刊1年目でドサブカルに手を染めちゃって、10年もったらたいしたもんだよ」